堕天王の逝く道

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zoom RSS 福岡県地元小説『あまとき』 第四話『おやすみなさい』

<<   作成日時 : 2013/09/04 08:52   >>

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私の地元を舞台にした小説です。


あらすじ
塔ノ尾公園を散歩中に、落ちて来たアマトキを抱き止めた慶介。
アマトキと慶介。神と人が紡ぐ優しい物語。


前回のお話
私はアマトキ。
カツカレーを食ったよ。本当に美味しかった!



 第四話 『おやすみなさい』

 ファミレスで食事を終えて戻って来た。ファミレスで少しばかりアマトキと話をしたので、今は二十一時少し前である。
 アマトキは、現在テレビを視聴中である。
 何故か慶介が撮り溜めているアニメの事を知っていた。今流れているのは、慶介もまだ見ていない最新話である。
 彼女を神だとは、どうしても思えない。しかし、彼女は色々と常識では計れない行動をする。その行動一つ一つが積み重なる様は、状況証拠を集めて犯人を特定するような感じであった。
 結局の所、アマトキは一体何者なのか?
「わけが分からない」
 アマトキは、アニメを見ながらそう呟いた。
「そう? 俺は、面白いと思うけど」
 今流れているアニメは、原作がないオリジナルのロボット作品である。主人公機と敵のライバル機が、熾烈な戦いを繰り広げている。
「私も、面白いと思っている。けど、違うのだよ、慶介」
 アマトキは、決してアニメから視線を外さない。
「おっ、変形した! 慶介、変形したぞ!」
「ここで来たか! この展開は燃える!」
 思わぬアニメの急展開に、二人はアニメに釘付けとなった。

「はぁ、しかし、本当にわけが分からない」
 アニメを見終えた後、アマトキは天井を見上げながら、再び『わけが分からない』と言う。
「結局、何が分からないと言っているの?」
 アマトキに、冷たいお茶の入ったコップを渡す。
「うむ、ご苦労。慶介は、良く気が付く男だ」
「そりゃどうも」
 アマトキは、お茶を一口含む。
「私が生きていた時代では、空とは空だったんだ。その向こうに何が広がっているのか、そんなものは考えたことがない。このアニメは、その空の向こう側の宇宙という場所を舞台にしている。慶介の知識があるとはいえ、もうこれは、わけが分からない、と言う以外にどう言えばいいのだ」
 そんな事を言われても、慶介もコメントに困る。
「世の中、難しい事を考えても仕方がないよ」
「うむ。私も、難しい事を考えるのは苦手だ。そもそも、難しい事は皆、兄様たちが代わりに考えてくれていたからな」
 ここに来て、兄の話が出て来た。しかも、『たち』である。
「その兄様の所へと帰ればいいじゃないか」
「それが出来れば、本当にいいな」
 アマトキは、寂しそうである。
「何を間違えてしまったのか。皆が幸せであることを願ったのに、どうにもこうにも上手く行かなかった。やっぱり、私が馬鹿だからであろうな」
 苦笑したかと思うと、今度はお茶の入ったガラスコップを視線の高さに持ち上げた。
「まぁ、そんな昔の話はどうでもいいのだよ! 慶介は、弟みたいな感じで、弟はいなかったから、実に新鮮だ! でも、兄様の事も大好きだったので、慶介には兄役も兼ねてもらいたい!」
「それこそわけが分からないよ」
 慶介は、立ち上がる。
「で、本当に泊まっていくつもりなのか?」
「泊まるも何も、しばらくは厄介になるつもりだぞ。この世界に、私が行く場所など、どこにもないからな」
「はぁ、仕方がない」
 アマトキには、何を言ってもダメなようである。しばらくは彼女の好きなようにさせるしかない。
 慶介は、諦めた。

 アマトキを抱えて二階へと上がる。普段使っていない畳の部屋。昔は、母が寝室代わりに使っていた。アマトキにその部屋を与える事にした。
「畳か。実に良い!」
「これから西日が強くなると、畳が熱を持って地獄になるから、その時は向こうの部屋を使っていいから」
 二階には三室あり、アマトキの部屋の正面は慶介の私室。慶介が使っていいといった部屋は、慶介が趣味で使っている隣の部屋である。
「私は別に、慶介と一緒でも全然良いのだぞ」
 挑発するように笑うアマトキ。慶介は、このアマトキの態度にカチンと来た。
 慶介は、アマトキを真正面から抱きかかえた。相変わらず、驚きの軽さだ。人を抱えているという、実感が乏しい。
「うわわわわっ! な、なに?!」
 突然の事に慌てるアマトキを、がっしりとホールド。
 アマトキの柔らかさに、慶介も自分を保つのが大変。それでも、慶介は頑張った。
「あまり、そうやって男をからかうものじゃない」
 アマトキの耳元で、静かに告げる。アマトキは、動かしていた手足をパタリと止めた。
「……ごめん」
 慶介は、アマトキを下に降ろした。
 バクバクと心臓が激しく鼓動を打っているのを気付かれまいと、慶介は平然を装う。
「少しはしゃぎ過ぎた」
「アマトキ。僕は、今でも君の事を疑っているし、世間体も気になるし、どうしていいのか分からないでいる。でも、君が悪さをしそうにない感じだから、とりあえず君のしたいようにさせている。善意を押し付けるつもりはないけど、その事をしっかりと知っておいてもらいたい」
 ゆっくりと諭すように。それは、慶介自身もまた、アマトキの事をどう思っているのか、確認するためのものであった。
「心得た」
 それからアマトキは、にへらと笑った。
「慶介は、良い人だ」
 真正面からそう言われて、慶介も照れる。
「そう思うなら、早く親元へと帰れよ」
「とりあえずは、それでいい」
 何が、『とりあえず』で、『それでいい』なのか、慶介には分からなかった。ただ、アマトキが幸せそうに、穏やかそうに笑っている。それだけで、難しい事を考えるのが馬鹿らしくなった。
「じゃ、おやすみ」
「おやすみなさい」
 アマトキのその言葉は、慶介の心へと甘く染みていった。



 引き戸が閉じられる。アマトキの視界から、慶介の姿が消えた。
 不意に訪れる寂しさ。しかし、その寂しさに浸る暇はなかった。

 ヒタリ―――ヒタリ――。

 アマトキは、天井を見上げる。

 オマエハダレ?

 天井から注がれる視線は、そう問うているようであった。
「別に、あの子に悪さをしに来たわけじゃないから、安心しろ。先住民さん」
 アマトキは、天井から視線を逸らす。
「まさか、こんなのが住みついているとはな。まぁ、それはそれで面白いか」
 アマトキは、クスリと笑った。



 私はアマトキ。
 慶介との一日目が終わったよ。先住民さんもよろしくね。

 慶介。
 おやすみなさい。





 第四話  END

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