堕天王の逝く道

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zoom RSS 福岡県地元小説『あまとき』 第三話『ご飯を食べに行くんですよ』

<<   作成日時 : 2013/08/31 09:09   >>

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私の地元を舞台にした小説です。


あらすじ
塔ノ尾公園を散歩中に、落ちて来たアマトキを抱き止めた慶介。
アマトキと慶介。神と人が紡ぐ優しい物語。


前回のお話
私は、アマトキ。
服を慶介と一緒に探したよ。ちなみに、ブラジャーは買いました。ふざけんな。



   第三話 『ご飯を食べに行くんですよ』

 慶介は、考えた。
 夕食を食べるなら、どこに行くべきか。
 アマトキがどこの誰か良く分からない。慶介も、かなり警戒している所があった。そのため、近場で安い場所に行くことにした。
 慶介の家から一番近いファミレス。このファミレスの売りは、とにかく安い事。安ければ、正義なのだ。洒落たお店でもないので、ジャージ姿のアマトキを連れて来ても、全く浮かない。実に誂え向きであった。
 禁煙席の空いている席へ。
 アマトキは、目をキラキラと輝かせて、メニューを見ていた。
「凄い! 飽食の時代とは、良く言ったものだ!」
 そんなわけの分からない感想を述べている。
「慶介は何を食べるのだ?」
「ん……から揚げ定食でいいかな」
「うむ。なるほど」
「ゆっくりと考えていいよ」
「こういう時は、ゆっくり考えても答えはでないものだ。良し! カツカレーだ!」
 実に思いっきりがいい。
 店員を呼ぶベルを押して、店員にから揚げ定食とカツカレー、それからドリンクバーを二つ注文する。
「慶介、ココアだ! ココアを所望する!」
「はいはい」
 アマトキは、髪が長いため、移動が制限される。一回座ったら最後。自力で立ち上がる事が出来なくなってしまう。
 アマトキにココア。慶介は、烏龍茶を選ぶ。
 アマトキは、待っている間、楽しげな様子で両足をパタパタさせ、周りを見渡している。
「このファミレス、初めて?」
 アマトキの前にココアを置く。
「うむ、ご苦労」
 アマトキは、ココアの入ったコップを二回ほどクルクルと回す。何かの儀式か、それともただの手遊びの延長なのか。
「意外と熱そう。慶介、フーフーして」
「自分でしてください」
「ケチん坊」
 アマトキは、ココアに口をつけた後、『やっぱり熱い!』、『私は、お前が冷めるまでフーフーを止めない!』などなど、ココア一つに格闘を始める。
 一体何なのだ。この可愛い生き物は。
「そうだ、そもそも私の時代には、こんなのはなかったぞ」
 アマトキの言葉が、慶介が最初に聞いた『このファミレス、初めて?』の答えであったことに気付くのに、少しばかり時間を要した。
「奈良時代にはないわな」
 まだ、アマトキの設定は続いているようである。
「ちなみに、昔はどんなのを食べていたの?」
 少し意地悪をしてみる事にした。
「う〜ん……米と草、木の実。時々、魚。甘い! この飲み物は本当甘い! 凄い凄い! なにこれ! 凄いよ!」
 アマトキは、初めてココアを飲むような反応を示す。どこまでが演技で、どこまでが本気なのか。全てが本気ではなかろう。
 多分。
「しっかし、正直驚いた」
 アマトキは、窓の外を見ている。
「四王寺を越えた先が、こんな姿になっていようとは。知識は慶介から貰った分があるけど、実際に目の当たりにすると、やっぱり驚く」
 アマトキの遠くを見る瞳。そんな彼女の横顔は、どことなく愁いを帯びているようにも見えた。
「この真下の道は、大宰府に繋がっているのか?」
「そうだよ。まっすぐ行って、橋の手前を右に折れたら大宰府」
「そっか。大宰府か。今は学問の神になった、菅原道真公を祀っているらしいな。驚きだ」
「ちなみに反対側にまっすぐ行けば、八幡宮だよ」
「……そっか」
 急に表情が暗くなる。八幡宮にはいい思い出がないのだろうか。
「お待たせしました」
 店員が、注文した食事を持ってきた。
「待っていました!」
 アマトキの表情が一瞬で煌びやかに輝く。
「実にご苦労!」
 右手をあげて、店員にお礼を言っている。女性の店員は、アマトキの可愛さにあてられたのだろう、『いいえ』と笑う。
 まさに、可愛いは正義。
「慶介」
「ん?」
「カレーとは、カレーなる食い物だという知識がある。意味が分からないのだが」
「カレーは、カレーだよ」
 カレーを説明しろと言われても、正直困る。
「では、いただきます」
 アマトキは、両手をしっかり合わせて、少しだけ会釈した。早速食べようとしていた慶介も、持っていた箸を一端置く。
「いただきます」
 慶介もアマトキに倣った。
「なにこれ、めっちゃうまかぁ!」
 過剰ともいえる反応。慶介は、呆れていた。
「良かったね。めっちゃとか、久しぶりに聞いた」
「慶介の知識では、この地域の方言らしいじゃないか」
「厳密に言えば、微妙に違うよ」
「そうなのか。なら、でりゃうみゃーは?」
「それ、名古屋じゃん。さっきから、俺の知識がどうのとか言っているけど」
「初めて会った時、知識を頂いた。さすがに言語も時代も違い過ぎて、どうにもならなかったからな。このトンカツとかいう食い物も美味しい!」
 初めて会った時。
 塔ノ尾公園にて、落下してきたアマトキをキャッチした。その時確かに、アマトキは得体の知れない言葉を喋っており、こちらの言葉も通じなかった。しかし、慶介の瞳をじっと見つめた後、急に分かる言葉を喋りだし、こちらの言葉も通じるようになった。
 アマトキが言っているのは、その事だろうか。
「……ん?」
 アマトキの言葉をそのまんま信じると、彼女は超常的な力を使ったことになる。
 奈良時代。彼女が本当にその時代の人であれば、言葉が通じないのも分かる。
 それならば、彼女は本当に神だというのか。
「そりゃないと思うんだけどな」
 カツカレーを食べているこの可愛い生き物が、神様とはとても思えない。
「何がないんだ?」
「いや、こんな可愛い生き物が神様なわけがない、とかそんな事を思っていたんだよ」
「可愛いって。うん、知っている」
 アマトキは、カレーを口角に付け、さもありなんと笑う。後半の方は、聞き流したようである。
 そうやって、アマトキとの食事は過ぎていった。 




 私はアマトキ。
 カツカレーを食ったよ。本当に美味しかった!




 第三話 END

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