堕天王の逝く道

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zoom RSS 福岡県地元小説『あまとき』 第二話『服を買うんですよ』

<<   作成日時 : 2013/08/28 07:59   >>

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私の地元を舞台にした小説です。

あらすじ
塔ノ尾公園を散歩中に、落ちて来たアマトキを抱き止めた慶介。
アマトキと慶介。神と人が紡ぐ優しい物語。

前回のお話
私はアマトキ。
日常生活、始めました。





 第二話 『服を買うんですよ』

 アマトキという女の子。自称『絶対にして唯一の神』。結局、押し切られる形で一緒に住むことになってしまったが――こんなの、隣人に通報されたら、間違いなく警察に御用だ! されてしまう。
 可愛い女の子が傍にいるのはとてもウキウキするが、同時にウツウツもするのである。
 あぁ、世の中、良い事ばかりなわけがない。



 ジャージ姿のアマトキ。その下には、何も着ていない。いつまでこの家にいるのか分からないが、このままというわけにもいかない。ということで、慶介はアマトキを伴って、二階の自室にやってきていた。
「改めて見ると、これはなかなかに圧巻」
 アマトキは、そんなわけの分からない事を言っている。慶介は、アニメやゲーム、漫画が好きで、部屋もその趣味に染まっている。パソコンデスクのモニターの上の段には、本来収まっているはずのプリンターではなく、美少女フィギュアが並んでいる。
 慶介は、オフィスチェアーに座り、キーボードのエンターキーを叩く。スリープモードになっていたパソコンが、ギュイン! と音を立てて、起動した。
「とりあえず、服とか下着はネットで買うから。届くまで、二三日はかかるけど、我慢しろよ。というか、自分の服とか持ってないの?」
「あれしかない。それに、あの服は一度脱ぐと、二度と自分では着れない」
 アマトキは、最初、得も知れない服を着ていた。巫女服のようでいて、歌舞伎で着ているような服のようで。確かにあれは、着物と同じで、一度脱ぐと着せ方が分かる人がいなければ、着る事が出来ない服のように思えた。
「なら、脱がなきゃ良かったじゃないか」
「埃っぽいままでいろと言うのか」
 そう言われると、反論できない。
「とりあえず、オッセンとかで買えばいいのかな」
 ブラウザーを立ち上げ、検索に文字を打ち込んでいく。そんな様を、アマトキはじっと眺めている。
「青いワンピースがいい」
 アマトキは、早速注文してきた。彼女の言葉が正しければ、彼女は奈良時代の人間のはず。その時代にワンピースがあるはずがない。やはり、その辺りも彼女の設定なのであろうか。
「ワンピースね……どういうのがいいんだ? あっ、ここは大人用か。子供用を探さないと」
「子供とか言うな。これでも私は十九歳だぞ」
「はいはい……えっ? 十九歳?」
 軽く流そうと思ったが、流せなかった。
「あっ、お前、私を小学生とかそれぐらいだと思っていただろう? 私は、立派な大人なのだぞ!」
 その割には、まともに歩く事も出来なければ、羞恥心もないようであるが。
「本当に十九歳?」
「嘘偽りなく、十九歳だ。まぁ、もう年を取らないから、正確に言えば享年十九歳、かな」
「享年って……死んでんじゃん」
「死人だからな」
 あっさりと言う。神なのか死人なのか。思ったよりも設定があやふやのようである。
「素朴な疑問なんだが、ブラジャーいるの?」
「冒涜だ! この不信者め! 災いあれ!」
 物凄く怒られた。
「とりあえずワンピースは、こんな感じだけど、どれか欲しいのある?」
「ん……というか、良く見えない。膝に乗せて」
「えっ? いやいや、ここに座ればいいだろう」
 ピンク色の妄想が脳裏をかすめたが、慌ててそれを振り払う。アマトキを抱えて、自分が座っていたオフィスチェアーに座らせた。
「んー……なんか、こうもっと可愛いのはないの?」
「そう言われても、俺、ブランドとか知らないから。ワンピースで検索……って、違うワンピースが引っかかるじゃないか」
「私は別に海賊王にはなりたくないんだが」
 漫画の事を知っている、この俗っぽい女の子が神なんて、やはりそういう設定だとしか思えない。
「ちなみに、おいくら万円まで、買っていいの?」
「二万ぐらいかな。ボーナスで何とかするよ」
「ふむ。いつか、この恩は返すから」
 実に真剣な表情のアマトキ。少しばかり意外に感じた。
「そう思うなら、早く家に帰ればいいのに」
「だから、私の家はここしかないと、何度も言っているだろう。あ、寝間着も買っていいか?」
 目をキラキラ輝かせて、マウスを器用に動かしている。その動作があまりにも自然で、自然すぎて不自然な事に気付くことに時間を要した。
 この自称『絶対にして唯一の神』は、難なくパソコンを操作できているではないか。やはり、神様とか奈良時代とか、そういうのは設定なのだろう。

 気付いたら、十八時になっていた。アマトキの要望をある程度聞きながら、買い物は終わった。ちなみに支払額が、二万を少し超えてしまった。
「別にいいよ」
 アマトキは、不安そうにしていたが、すぐに笑顔を取り戻す。
「お前は、いい男だ」
 そんな風に褒められたが、素直に喜ぶ気にはなれなかった。
「早く届かないかな」
 アマトキは、ご満悦である。それを見ていると、なんだか悩むのも馬鹿らしくなる。
 選んだ洋服。アマトキが着たら、どんな風になるのか。慶介も、なんだかんだで楽しみであった。 



 私は、アマトキ。
 服を慶介と一緒に探したよ。ちなみに、ブラジャーは買いました。ふざけんな。




 第二話 END

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