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zoom RSS 『夕子の食事真相』 黄昏乙女×アムネジア二次創作小説

<<   作成日時 : 2012/06/26 20:42   >>

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黄昏乙女×アムネジア


このお話は、夕子さんが霊体であるにも関わらず、食事を摂っている事に対して、不思議に思ったので作ったお話です。


  『夕子の食事真相』

 霧江は、常々不思議に思っている事があった。時々、新谷貞一が不思議な事を言うからだ。
「夕子さんは、甘いものが好きで、この間なんてクレープを二つも平らげてしまったんですよ」
 楽しげに話をしていたため、その時は相槌を打ちはしたものの、後から考えると『それはおかしい』という結論に至る。
 夕子は、霊体だ。彼女曰く、『見たいように見える』とのことであるため、霧江が見ている夕子と、新谷が見ている夕子が同じ姿なのか――ということは、比べようがない。しかし霧江は、一度も夕子が何かを食べている所を見たことがなかった。そもそも霊体である。触れる事が出来るのであれば、物理的な力が発生するのであろうと推測は出来るため、咀嚼は可能かもしれない。しかし、嚥下して消化することなんて可能なのだろうか? 消化が可能だとして、作られたエネルギーはどこに回され、排泄物はどういう形で外へ出るのだろうか。夕子は、トイレに行くのだろうか。しかし、夕子は汗をかかない。汗をかかないのに、他の排泄物が出るというのか?
 旧校舎にある部室。背中を壁に預け、腕を組み、霧江はもんもんと考えを巡らせていた。
 考えをまとめるため、いくつかの仮説を提唱して見る事にした。
 まず一つ。夕子ブラックホール説。食べたものは即座に分解され、霊体そのものに吸収されている。
 その二。実は、霊体であるが人と変わらない営みを送っている。
 その三――。
「その可能性もあるのか」
 霧江は、一つ思い至ったことがあった。一つ目も二つ目も、実に現実的ではない。幽霊の話で、『現実的』とは変な響きではあるが、腑に落ちないのである。
 夕子が食事を食べるという事象について、霧江は独自で調査をすることにした。

「新谷さんについて、何が聞きたいんですか?!」
 小此木は、目を輝かせて顔を近づけてくるため、右手で頭を抑える。調査とはいえ、やる事は『聞き取り』だけである。それも霧江の推測する通りなら、彼女からの『聞き取り』だけで、ある程度の結果を出せると判断していた。
「いや、ちょっと奇妙な事をしていると噂を聞いてさ。なんか、心当たりはないか?」
 小此木のマシンガンのように放たれる言葉の中から、欲しい情報を掻い摘むのは、思ったよりも大変であったが、その分成果は確かにあった。
 小此木に話を聞いた後、霧江は新谷を観察するようになった。数日観察しただけで、事の真相を把握するに至っていた。しかし、今度は別の問題で霧江は頭を悩ませていた。それから、二ヶ月ほど経過して――遂に霧江は我慢できなくなり、新谷を屋上に呼び出した。
「どうしたんですか? 霧江さん」
「私だって迷ったんだ。でも、もう無理だ。新谷、はっきり言うぞ!」
 霧江は決意を瞳に宿し、初めて会った時とは比べ物にならないほど、丸々と太った新谷を見つめた。
「夕子は、幽霊だ! 何も食べないんだよ!」
「何を言っているんですか? 霧江さん。昨日も、夕子さんと一緒にお弁当を食べましたよ」
「それは……」
 新谷は気づいていない。見た目は大きくなってしまったが、浮かべる無邪気な笑みは依然と変わりがない。そのため、真実を突き付けるのは残酷に感じられたが、最早そんな猶予はない。
「新谷が、二人分食べているに過ぎないんだよ!」
 事の真相はこうだ。
 夕子は『見たいように見える』、曖昧な存在である。すなわち『食べ物を食べている夕子』も、新谷がそう思い込み、見たいように見た結果に過ぎない。そのため、本当に夕子が何かを食べているわけではない。なら、夕子が食べていないのであれば、誰が食べていたのか。
 他でもない、新谷貞一本人である。事あるごとに二人分食べ続けた彼は、見事な肥満体へと変貌していたのだ。
「これ以上、太る新谷を見たくないんだ!」
 霧江は、涙を浮かべて必死にそう訴えた。新谷は、呆然としていた。そんな彼に手鏡を渡した。
「これが今の君の姿だ」
 手鏡に映りきれなくなってしまった新谷の体。それを見た新谷は、野太い声で空に吠えるのであった。

「丸々太った貞一君も、可愛いわよ」
 事を傍観していた夕子を、心の底から調伏してしまいたい――そう思う、霧江であった。

 END

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