堕天王の逝く道

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zoom RSS 瑠衣子と女帝の神さがし 第四話『公平なる存在』

<<   作成日時 : 2011/01/10 20:04   >>

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まだ書かないつもりだったのですが、すらすらと進んだので終わらせました。
今回は、女帝、愚者、月に続く、四柱目の神が登場します。その新しい神について描いた第四話。これで概ね話が整ったように思えます。
これ以降は、大きな話をまだ考えていないので、サクヤに決意を伝えに行くまでの間、ショートストーリーを積み重ねようかと思っています。まだ、登場していないキャラもいますので。

てことで、第四話です。

堕天王式魔法少女
瑠衣子と女帝の神さがし

あらすじ
女帝と言う異世界の神を助けた沖宮瑠衣子。女帝と共に在ることを選んだ彼女の下に、サクヤという土地神がやってくる。その土地神との話も終わったかと思うと、次は新たな異世界の神が瑠衣子の前に現れた。彼女は一体何者なのか?

第一話 『私は、魔法少女になった』
http://47762756.at.webry.info/201010/article_15.html
第二話 『異世界から来た神』
http://47762756.at.webry.info/201011/article_3.html
第三話 『土地神の襲来』
http://47762756.at.webry.info/201012/article_14.html

登場人物
沖宮瑠衣子:本作主人公。25歳で、魔法少女となる。正義感が強い。
女帝:異世界から転移してきた神。向こうの世界で何があったのかは、教えてくれない。



 第四話 『公平なる存在』

 慌てて、コンビニの中へと戻った瑠衣子。あの少女が異世界の神であるのであれば、女帝を呼び出すしかない。愚者から預かった大地の杖のレプリカがあれば少しは戦えるかもしれないが、生憎家に置いてきている。さすがに、あんな無骨なものを持って外には出られない。女帝もその事には言及しなかったし、瑠衣子も早々あの杖が必要な場面がやって来るなんて思いもしていなかった。
 まさか、本日早速必要になって来るなんて。瑠衣子は、己の認識の甘さを痛感していた。
 ポケットから携帯電話を取り出し――そこで、周りが静か過ぎることに気付いた。さきほどまで聞こえていた有線放送の音が聞こえない。コンビニの来客を知らせる音が聞こえない。店員の声も、そのほか何もかも。携帯を両手で持ったまま視線を滑らせた先、コンビニの入り口側にさきほどの少女が立っていた。瑠衣子は、体を小さくして、後ずさった。
「私を認識できた理由を明確にせよ」
 抑揚のない声。感情が伴っていないとはいえ、この少女が付きつけている現実は嫌と言うほど分かった。
 答えるか、殺されるか。
 あの月と出会った時とは違う、全く種類の違う殺意。月は嫌悪を纏い、感情で殺すと言っていた。しかしこの少女は違う。説明書に、『答えないなら殺していい』と書いてあったから殺しました。そんな、マニュアル通りの殺意。殺意にも冷たいものや、熱いものがあるのかと、瑠衣子は半ば驚いていた。
「こ、こんな所で騒ぎを起こしたら、大事になるわよ!」
 精一杯の虚勢を張って見せる。そうでもしなければ、足が崩れ落ちそうだった。しかし、少女の表情はまるで動かなかった。その無表情の怖さ。時が刻むたびに、体の隅々まで恐怖が駆け巡っていく。
「私を、他の人間が認識できていないように、今この空間を認識できなくした。答えろ」
 良くは分からないが、何かしらの結界のようなものを張ったらしい。女帝を見てきて分かったことだが、一見普通の女の子のように見えても、細々とした便利スキルを内蔵しているのが彼女らだ。すぐに忘れてしまうが、彼女らは神なのだ。人智の及ばないそういう存在なのだ。
「答えろ。それとも答えたくない理由があるのか。人間、お前に選択肢を与えているのは、私が極力この世界に干渉したくないと考えているからだ。別に黙っていたままでも構わない。その場合は、お前を殺して、魂から情報を抜き取るだけだ。そんな手間をかけさせるな」
 気配から分かっていたが、やはり答えるか、殺されるかの二択しかないようだ。電話をかけている余裕もない。この事態を何とか脱して、女帝にこの少女の事を伝える。そのためにはどうしたらいいのか。
「私は……」
 とりあえず発声してみた。だが、言葉の続きがまだ出来ていない。素直に女帝の事を話すべきか。しかし、この少女が女帝に敵対する存在だったらどうする。今の女帝に、己を護る力はない。その時、雷光のようにある名前が閃いた。
「愚者に力をもらったのよ」
 物事を簡潔に説明すれば、こうなる。何も嘘は言っていない。だた、女帝と言う情報を省いただけ。途端、少女から殺意が消えた。それはもう、あっさりするほどに。
「愚者がやることは、向こう側でもこちら側でも変わらないという事か。納得した」
 少女は、そのままコンビニの外へと出て行った。視線でそれを追いかけると、少女は元いた場所へと戻ったようである。少女がコンビニの外へと出た途端、まず歌が聞こえてきた。コンビニに流れている有線放送だ。急に、全ての世界が色付いて見えるようになった。
「先輩、何をしているんですか?」
「うひゃぁ!」
 急に声をかけられて、驚く瑠衣子。振り返ると、怪訝な顔でほうきを持つ、後輩の姿がそこにあった。
「なんだ、理香か。脅かさないでよね」
「そんなニコニコ這い寄るニャルラトホテプを見たような反応されても、困るんですけど」
「アンタ、そんな可愛げがある存在じゃないでしょ」
「ニャルラトホテプ以上なんて、先輩酷いこと言いますね」
「はいはい。ちょっと電話するから、あっち行って」
 肩をすくめながら、瑠衣子の後輩里川理香は離れて行った。瑠衣子は、早速自宅へと電話をかけた。
『はい、女帝……いえ、沖宮家でございます』
「どこのメイドよ」
 思わず突っ込んでしまった。家にかかってくる電話にこのノリで毎回名乗られると、余計な噂がつきまといそうである。家に戻ったら一言言っておかなきゃ――瑠衣子は、そう思った。
『その声は、瑠衣子さん?』
「はい、私です。女帝、今コンビニにいるんだけど、外にね……なんていうかな、神父さん? 違うなぁ、なんか宗教やっているっぽいような格好をした女の子がいたんだけど、女帝の知り合い?」
『感情が薄い子ですか?』
「薄いっていうか、全然ない。ロボットみたい」
『あぁ、法王ですね。近くのコンビニですね。その場所なら分かります。今から向かいます』
 女帝はあっさりとしていた。今の内容からすると、先程の少女は女帝の敵ではないようだ。一気に力が抜けてしまう。それが最初から分かっていれば、『私は女帝の仲間よ!』と胸を張って主張しておけばよかったのだから。
「すんごい怖い思いしたのに、なんか納得いかないわね」
 用を終えた携帯電話をポケットに仕舞い、外へと出る。雨は、相変わらずしとしとと降り続けていた。視線をゴミ箱の方へと向けると、こちらも相変わらず少女――法王であることが判明した少女は、俯きじっと立っている。その様は、亡霊のようにも見えた。瑠衣子の視線にも気付いてはいるのだろうが、完全に興味を無くしているのだろう、瑠衣子の方に顔を向ける事はなかった。
 十分ほど待ったか。コンビニの明かりに照らされた駐車場に、女帝がやって来た。瑠衣子は女帝の姿を認めると、法王の方を指さした。女帝は瑠衣子の方に歩いて来ていたが、方向を変えて、そのまま法王の所へと向かう。瑠衣子も、ゴミ箱の近くまで歩を進めた。折角の再会を邪魔したくはなかったが、まるで関係ないという風に装うわけも行かない。女帝と関わり続けると決めた以上、出来るだけ女帝の傍に在りたいと考えているからだ。
「法王!」
 女帝の呼びかけに、法王はゆっくりと顔を上げ、そして目を見開いていた。瑠衣子は横で見ながら、この子にも表情があるんだ――と、驚いた。
「……女帝。生きて、いた。そう、生きていたのか」
 女帝は法王に抱き着いた。法王はそれを安らかな表情で受け止めた。まるでロボットの様で、感情なんてないものだと思っていたが、そうではなかったようである。
「女帝、私はあなたに謝りたかった。法王という存在であるがゆえに、公平でなければならかった。本当はあなたと戦う道を選び、あなたの盾となりたかった。だが、私は法王であるという束縛を解く事が出来なかった。辛い役目ばかり押し付け、傍観者に徹してしまった。本当に申し訳ない」
「法王が謝る事必要なんてありません。私は、私の責務を果たしたに過ぎません」
「それは、女帝一人が背負うべきものではない。女帝と共に歩む道を選んだ、私たち全員の責務である」
「いいえ、これは私一人だけの責務。私が背負うべきもの。だから、法王が謝る事ではありません」
 瑠衣子は不思議に感じた。事情は分からないが、女帝は何かしらの事柄をどうやら一人で背負いこもうとしているようである。その事をどうして不思議に思ったのかは分からない。ただ、何かしらそこに女帝を頑なにしているものがあるように思えた。
「ところで、あなたは女帝の協力者なのか?」
 急に話を振られた。呼び方が、『人間』から『あなた』という柔らかい形に変化している。おかげで、瑠衣子は肩を張らずに済んだ。
「そうよ。沖宮瑠衣子と言います」
「法王という存在である」
「ごめんね、女帝の仲間かどうか分からなかったから、あんないい方にしちゃって」
「沖宮が謝ることはない。むしろ、私はその行動を評価する」
 それから少し間を置いて法王は、下を向いたかと思うと、どこか決意したような顔で再び瑠衣子の顔を見上げてきた。
「先程は脅して悪かった。謝罪する」
「えっ? あ、怖かったけど、仕方ないんじゃないかな。気にしないでよ」
 ただ謝るだけだというのに、それほど覚悟がいるものなのか。瑠衣子はそんな風に思ったが、女帝は全く違っており、驚き法王を穴が開くほど見つめていた。
「法王が人に謝罪するなんて。どういう心変わりなの?」
「すでに私は、法の番人としての職務を失っている。私の個人的な感情で彼女を脅したのだから、和解した今、それを謝るのが……そう、人間がやっていることだ」
 法王が謝ることは、相当珍しい事であったらしい。
「そう。ねぇ、法王。あなたはこれからどうするおつもりですか?」
「分からない」
 きっぱりと、迷うことなく言う。
「この世界に、私の居場所はない。私は、法王でいる事が出来ない。職務を失った私は、ただの形骸である。このまま、ここで朽ちてしまうのも悪くないと思っている」
 女帝も言葉に窮しているようである。どうやら法王は、職を失ってするべきことを見失っているようだ。相手が同じ人間だったら、知恵を貸せるのだけど――と、瑠衣子も頭を悩ませていると、ガラスに張り付けてあるコンビニのバイト募集の紙が目に付いた。
「職をなくしてすることがないって言う意味なら、働けばいいんじゃない?」
 物は試しだと、瑠衣子はバイト募集の紙をコンコンと叩いた。法王は、そのバイト募集の紙を食い入るように見た後、何やら納得したのか、コクッと頷いた。
「まさか人から天啓を受けるとは思わなかった。感謝する、沖宮」
 深々と頭を下げる法王。どうやら、本気で働くつもりらしい。身分の証明や、そもそもこの見た目年齢で雇ってもらえるのかという疑問が過ったが、口にするのは止めた。彼女は人ではない。神々の神秘というご都合主義で、なんでも通してしまうのが目に見えていたからだ。
「女帝、私はここにいることにした。もし、力を欲する時は私を呼べ。今の私を縛るものはない。いつでも女帝の力となろう」
「その時は、頼りにします」
 法王は、女帝と瑠衣子にそれぞれ軽く頭を下げてから、コンビニの中へと入っていった。

 翌日から、法王は昼間のパートとして働くようになっていた。服装は、コンビニの制服であるが、容姿は子供。髪の色も目の色も奇抜なのに、誰もその事に突っ込まない。また何かしらの細工を施しているようだった。
「法王、どう調子は?」
 昼少し前、偵察がてらコンビニに弁当を買いに来た瑠衣子。ついでに、そんな事を聞いてみた。
「身体面、精神面ともに安定している。私よりも、己の事を気遣え。相当疲れているようだ」
「そんなの分かるの? それも神の力とか?」
「顔色を見れば分かる」
「そりゃそうだよね」
 相変わらず、味気のない言葉しか返ってこない。
 法王は、初日でありながらも、驚くほどスムーズに仕事をこなしている。これも神補正なのか? と尋ねたかったが、二度も尋ねるのは躊躇われたので、結局聞かなかった。
「ウチ近いから、遊びに来ていいからね」
「感謝する」
 その時、少しだけ法王が笑ったような気がした。しかし、それは僅かの間に消えてしまった。神という存在が変化するものなのか。それは分からない。分からないから、観察するのも悪くはない。瑠衣子は、そんな楽しみを見出すのであった。

第四話 END

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