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zoom RSS 幽世喫茶『ひふみの大冒険』後日談 完成

<<   作成日時 : 2010/02/14 19:55   >>

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完成とのことで。
本文96分。プロット2分(笑。

頭に浮かんでいた話を、要所要所書いただけのものなので、仕方がない。
今回の話は、幽世喫茶というお話の原点に戻ろうとしている話ですね。なんだか、ついついバトルモノにしてしまいそうになるもので。最終的には、バトルモノで決着するわけですが、そこに至るまでは出来るだけ、『幽世喫茶』の持ち味である、『まったり』と『お馬鹿』を大切にしたい。
なので、今回のお話が、このザマーです。台詞メインで、文章的なこだわりをかなぐり捨てた・・・なんというかな、まぁ読みやすいものになっていると思います。文章的なこだわりを追求すると、話をシリアスにしないといけないし。その分、時間がかかるし。

次回の話は、『マイマイ無双』というタイトルです。しばらく時間が空いちゃいますので、また書き始める前ぐらいに宣伝を。

そう、今回の話で名前だけの登場となった、新キャラ『華夏流(かげる)』。しばらくは出てきませんので、気にしないで下さい。

さて、本格的に合同誌用の作品を作らないとな。最近、テンションが下がり気味で、なかなか上手く世界を構築できていません。ゲストキャラの名前さえ、未完成と言う。間に合うかなぁ・・・。

ひふみの大冒険本編は、
http://47762756.at.webry.info/200912/article_12.html
HTMLは、
http://www5f.biglobe.ne.jp/~pfive/tyouhen/shortstrory.html


幽世喫茶 『ひふみの大冒険』 後日談

登場人物
乙衣兎渡子(おとぎぬととこ):幽世喫茶のマスター。幽世の調べを奏でる特殊な指を持っており、その指が触れた珈琲は、記憶を復元する能力を有す。基本、ダメ人間。
マイ:マイセンカップの付喪神(つくもがみ)。幽世喫茶は、彼女が居るから運営できている。
春野蓮華(はるのれんげ):兎渡子の親友。除霊屋という特殊な仕事に携わっている。
春野ひふみ:九州でも指折りの感応士。

乙衣烏華(おとぎぬうか):兎渡子の姉。

除霊屋:『理から外れしモノたちを修正する者』たちの総称。ようは、化け物退治の人たち。家ごとに機能している。

――――――――
 ひふみの大冒険 後日談

 春野家の当主の間。蓮華は、いつものようにスーツ姿でそこを訪れていた。
「蓮華です。入ります」
 当主の間には、春野家の当主である樹久――六十二歳になる白髪の男で、穏やかな表情をしている、と、相変わらずダボダボの洋服を身に纏うひふみの姿があった。彼女の場合、庇護されている立場であり、当主の前でも普段と変わらないだらしのない座り方をしている。
「レンちゃん、いっらしゃ〜い。子安餅食べる?」
「子安餅? 誰か、子供でも生まれるのか?」
 子安餅は、麓の町の八幡宮で売られている餅で、その八幡宮は安産の神を祭っている。
「わ・た・し・の、こ・ど・も!」
「はいはい、三百回ぐらい死ね」
「えぇー、もう冷たいよ〜。もっと、遊んでよ」
「お前、一人で遊ぶのは上手だろう? 一人で遊んでろ」
「レンちゃんの、エッチ」
「なんでだよ!」
「餅は、私が近くに通った時に買ってきたものだ。別に意味はないよ」
 蓮華とひふみが騒いでも、樹久は全く動じない。これが日常茶飯事なのだから、慣れてしまうのだろう。
「そうですか。当主、報告書です」
 蓮華が、A4の茶封筒を樹久に渡す。
「もう調べ終わったのか?」
「意外に口が軽い奴でした。やっぱり仕掛けてきたのは、山崎家の連中です」
 山崎家とは、福岡県の南部を根城にする除霊屋の名前で、ひふみが生まれて以来、なにかと厄介ごとを運んでくる一族である。
「内通者も特定したのか?」
 今回の事件、内通者が居る事が早くから分かっていた。あまりにも山崎家の動きが早かったからだ。
「はい、もう海外に逃亡した後でしたが。追っ手は放ちますか?」
「よい。そんな旅費、誰が出す。私は、出さんぞ」
「そう言うと思ってました。こちらで捕らえた山崎家の連中は、船の貨物にぶち込んで、香港辺りに流そうと思いますが」
「それでいい。餞別に三万円ぐらい渡してやれ」
「日本円で?」
「なかなかの配慮だろう?」
「最強です」
「・・・真っ黒だね、二人とも」
 樹久と蓮華の話を聞いて、ひふみはそんな感想を零した。
「一応、橘家にも報告しておきますか?」
「そうだな。報告しておかないと怖いしな」
「じゃ、華夏流(かげる)に行ってもらいます」
「お前が行きなさい」
 蓮華は、すっと視線を逸らした。
「だから、なんで私が?」
「オセロットの時も行ったではないか。お前ほどの適任はいない!」
「華夏流でいいじゃないですか。いずれ当主になるんでしょ? 頑張ってもらいましょうよ、そこは」
「可愛い孫娘を、あんな危ない所にやれるか!」
「当主がそんなんだから、あのバカ娘はつけ上がるんですよ!」
「お前、華夏流をバカと申したか?!」
「言ってやりましたよ! だから、なんですか!」
「二人とも〜、ひふみ、退屈なんだけど〜」
 樹久と蓮華は、無言で睨み合った後、お互い同時に視線を逸らした。最早、子供の喧嘩である。
「特別手当。それで考えます」
「その心の狭さで、婚期を逃すんだ」
「当主・・・!!」
「うわぁ〜、ちょっと待った! 畳返しちゃダメ!!」
 畳の隙間にメキメキと指を差し込んでいる蓮華を見て、彼女の次の一手に感づいたひふみが、さすがに慌てて止めた。別に樹久がどうなろうと構わない。蓮華が畳を返したら、その衝撃で全ての畳が吹っ飛んでしまう。そんなことになったら、ひふみも共倒れだ。
「レンちゃん、ダメだよ。お給料をくれる人には、優しくしないと」
「・・・くそ、分かっているんだ。当主なんて、所詮キャッシュカードみたいなものだってことは!」
「お前、無茶苦茶言いよるなぁ・・」
「はぁ・・・落ち着け、蓮華。私は強い子だ」
 蓮華は、自己暗示で平静を保つように努めた。
「レンちゃん、報告は終わり? 終わったなら、トトちゃんの話をしようよ。私、別に当主とレンちゃんの、喧嘩を見に来たわけじゃないよ」
 怒って見せるひふみだが、余計に可愛らしいだけである。
「あぁ、あとは報告書を読みやがれ」
 ドスンと、座りなおす蓮華。怒り心頭で、一応いつもなら当主の前では正座をしている彼女も、今は胡坐を掻いていた。
「兎渡子のこととは、なんだ?」
「兎渡子の面会についてです」
 蓮華が言う面会とは、ひふみに設けられている面会制限の事である。ひふみは、春野家の人間にしか会うことを許されていない。感応士という、特殊な力を持って生まれてきた彼女を守るための、一つの策だ。
「春野家の人間ではない以上、兎渡子はもうひふみとは会えない。居場所が分かっていても、会えなければ余計に寂しいだけだ。そう思って、黙っていたというのに・・・」
 頭を抱える蓮華。だが、ひふみは不満そうだ。
「それは、レンちゃんが判断する事じゃないよ。そういうの、余計なお世話って言うの。レンちゃん、気を遣いすぎるの!」
「・・・気を遣って何が悪い」
「レンちゃん、違うの。違うの! 他人の痛みまで、背負う必要なんかないって私は言ってるの! なんでもかんでも背負っちゃうから、そんなに強がってないと生きられないんだよ?」
「私が・・・強がっている? 馬鹿にするな!」
 ひふみの胸倉を掴みあげる。しかし、ひふみの瞳には焦りも恐怖も何もない。
「馬鹿にしてないよ。真実だよ。トトちゃんが、この家を出たのは、レンちゃんのせいじゃないんだよ」
 蓮華は、その言葉に心を打たれて、手を離した。力なく、畳に腰を落とす。
「そうだな。蓮華の責任ではない。お前の悪い所は、一人で背負い込む事だ。話を聞いてくれる人間はごまんといるのに、お前は誰も頼らない。唯一、烏華だけであったな。お前が頼っていたのは」
 烏華とは、兎渡子の姉の名前で、現在生死不明である。
「そんなことだから、早とちりをする。兎渡子の出入りを禁止した覚えはないぞ」
「はっ?」
「兎渡子の籍は、まだ残っている。だから、今でも兎渡子は春野家の人間だ」
「そんな・・・えっ? どういうことですか?」
「どういうことも、兎渡子から籍を外すような申請を受けていない。だから、昔のままだ。それだけの話だぞ」
 鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔の蓮華。少しずつ状況を飲み込めてきたが、ひふみのほうが飲み込みは早かった。彼女は、勝ち誇ったような顔で、蓮華を指差した。
「レンちゃんのお馬鹿さん! こんなオチじゃないかなぁ〜って、思ってたよ!」
「知るかっ! 普通、何年も居なければ、除名されたと思うだろうが! なんで教えてくれなかったんですか?」
「聞かれてもない。お前が人を頼らないからこういうことになるんだ」
「当主〜、減給しようよ。もうダメだよ、レンちゃんは」
「ひふみがそう言うのなら、減給しよう」
「くそっ! 私がなんのために・・・こんな家・・・出て行くから!!」
 蓮華は泣きながら、部屋を出て行った。当主とひふみは、まったく焦った様子がなく、冷ややかな表情をしていた。
「レンちゃんの家出、何度目かな」
「数え切れんな。ほとぼりが冷めれば帰ってくるが・・・む〜ん、せめて橘家に報告してから、家出をしてほしかったな」
「それなら、橘家のご当主様に直接、幽世喫茶に行ってもらえばいいんですよ」
 ひふみの言葉の意味が分からず、樹久は首を傾げた。
「さすがに橘家のご当主様が、幽世喫茶には行かないのではないか?」
「当主、忘れちゃダメですよ。トトちゃんは、あの水及様のお弟子さんなんですよ」
 水及とは、橘家の後見人である。ようは、当主より偉い人だ。
「そうだったな。なら、そうしてもらおうか」
「連絡なら、私がしておくよ。私は、皆が言うほど、勝彦様は怖くないんだけどなぁ〜」
「そうか。なら、頼もう。来月は、お小遣いを増やしてやるからな」
「やった! 当主、大好き!」
 当主に抱きつくひふみ。まるで子供のようである。
「そうだ、ひふみ。心配していたあの男の子のことだが、今朝無事退院したそうだ」
 当主から離れたひふみは、ついさきほどの子供のような無邪気さがなくなっていた。増山浩二。ひふみが外を出歩いていた時、その手を引いてくれた少年の事である。
「そうなんだ。良かった」
「美由紀と一緒なら、面会を許可できる。もう一度会って、お礼を言っておかないか?」
「・・・うん。分かった。そうだね、ちゃんとお礼を言って、それから謝らないとね」
 樹久は、ひふみの頭を優しく撫でた。樹久にとってひふみは、自分の息子よりも手をかけた存在である。感応士と言う特殊な能力を有した彼女を、どうやって曲がらずに育てるか。少し変な方向に芽を出した傾向はあるが、その本質はとても清らかな流水のように美しい。そのことが、樹久にとっては何よりも嬉しかった。

 その頃蓮華は――。
「兎渡子、家出してきた。泊まらせて」
 泣きながら、結局ひふみの読み通り幽世喫茶にやってきていた。昔から、家を出ては兎渡子の家にやってきていたので、兎渡子も驚くどころか完全に呆れていた。
「またなの? 進歩がないわね・・・本当」
「煩い。皆、嫌いだ」
「珈琲、入れるわね」
 泣いている蓮華を宥めるのも、兎渡子は慣れている。カウンターで珈琲の準備をしていると、ふと昔の事を思い出した。
「・・・思えば、私が最初に珈琲を他人に飲ませたのって、蓮華が初めてだったわね」
「そんな話・・・してたような気がする」
「こうやってると、なんだか不思議だわ」
 兎渡子が微笑む。場所は違えど、やっていることは同じ。そのことに、懐かしさを覚えたのだ。
「・・・兎渡子。私は、やっぱりダメ人間なんだろうか・・・」
「そんな事を言ったのは、当主? それともひふみ? 二人とも、容赦ないものね。私は、蓮華の事が好きよ。だから、そんなに泣かないで」
「うん・・・」
「今日は、昔みたいに愚痴を聞かせてよ。蓮華の愚痴、そう言えばしばらく聞いてなかったから、なんだか聞きたくなっちゃった」
 兎渡子は、蓮華の前に珈琲を置いた。暖かい湯気と香りが、蓮華の頬を優しく撫でてくれる。
「本当、頭に来るんだよ」
 蓮華はその日、泣き疲れて眠るまで口を零し続けた。

 ここは幽世喫茶。
 旧友が愚痴を零しに来るお店。

 ひふみの大冒険 END

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なんだか、先週活動報告をしたのか? と、ずっと思っていて、今日。 『していなかった』という事実を確認した(苦笑。 ...続きを見る
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