堕天王の逝く道

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zoom RSS MeIderuEren 『MeIderuErenの旗が揚がるまで』1話 0〜3 完成

<<   作成日時 : 2009/12/06 20:58   >>

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12月6日
修正を終えたので、完成とします。それに伴い、分割を0〜4→0〜3へ。
執筆時間は、789分でした。おかしいな? と思うところがありましたら、教えてください。

12月4日
8割近く終わったかと思います。現在11時間ですね、執筆時間。
私は、基本脳内で先に映像化しておいて、執筆していくスタイルなんですが、今回書いた分で、映像化が済んだ分は書き終えてしまいました。なので、これ以上は今の所打つ手なし。また、映像化に勤しまないといけません。
今日は夜勤なので、日曜日ぐらいには続きを書けるかなっと思います。
この調子だと、来週一杯までには出来そうかな。


12月2日
三分の二は終わりました。残りは、決戦と後日談。
とある同人小説を読んでいたら、『・・・キャラが分からん、続きもの? ・・・分けがわからん』と、困惑したのでキャラ紹介を付けてみる。個人的に、スエルの変態具合がたまらん。
パイロンドとメイの契約で、次の話が作れそう。まだ、未定だけど。

もし、なにか気づいた事がありましたら、コメントを頂けると幸いです。

ちなみに、前回のお話である
『汝、その名はネズ王』は、http://47762756.at.webry.info/200903/article_12.html
これの続きですが、半年も経っていたんですね。


MeIdereEren
『MeIderuErenの旗が揚がるまで』 1話
4〜6 http://47762756.at.webry.info/200912/article_4.html

登場人物
メイ(14歳):主人公。イデルの家でメイドをしている。『嵐の災厄』と呼ばれる事件で孤児となった。
イデル(30歳):『嵐の災厄』で、メイを助け引き取った騎士。現在遠征で不在。
エレン(年齢不明):イデルに助けられたエルフ。家出をしてしまう。

ガレンス:メイが住んでいる屋敷の側にある関所に詰める駐屯部隊の隊長。
パイロンド:駐屯部隊の魔導師の長。

レック(ゴブリン1):部下。真面目。
ザック(ゴブリン2):ギャンブラー。
スエル(ゴブリン3):変態。
オムリック(ゴブリン4):デブ。

ダークエルフ:闇の精霊と契約した、エルフの死刑執行人。


 ※この物語は、一部の固有名詞を現代の言葉に翻訳しております。

 0.後悔
 エレンは、思った。なんでこんなことになったのか――と。
「すまないねぇ〜、本当に助かったよ。それは私の命を繋ぎとめた、大切な物だからね。見つからなかったら、どうしようかと思っていたところなんだよ」
 ルビーのような赤い色の輝きを纏う石。しかし、それは単なる『宝石』では済まされない、不思議な波長を放っていた。エレンは、森の中で偶然それを拾い、その宝石を探していた女性と巡り合った。
「そうですか。良かったです」
 大きなリュックを背負い、薄汚れた登山服のような物を身に纏ったその女性にエレンは石を返した。
「・・・不思議ね。もうここで別れたら二度と会えないはずなのに、あなたとはまた会えそうな予感がするわ。その時、このお礼は必ずするから。また、会いましょう」
 女性は、晴れやかに笑って去っていった。
 いいことをした。そう思った。
 しかし――。
 どこにも逃げる場所なんてないのだろうか。目の前で繰り広げられる戦い、その向こう側で魔導師の側に立つ少女がいる。
 なぜ、彼女は追ってきたのだろうか。彼女に、エレンを助ける理由なんてないはずだ。
 なんでこんなことになっているのだろうか。
「私は・・・あの時、やっぱり死ぬべきだった・・・」
 今まで一度も思わないようにしていた言葉が、自然と口から零れ落ちた。

1. 失踪したエレン
 ネズ王。それは、巨大化したドブネズミが自称した単語。原因はまったくの不明。好きなだけ暴れて、朝になったら普通のサイズに戻って死んでいた。
 そして、エレンはいなくなった――。

「こりゃぁ〜、派手にやらかしたぜ」
 馴染みのある大工が、壊れた玄関を見てそう感想を述べた。
 壊れたものは修繕しなければならない。現在、主(あるじ)であるイデルがいないからといって、そのままにしておくわけにもいかない。メイは、早速大工を呼び寄せた。
「お願いできますか?」
「おう、それが仕事だからな。まずは片付けるか。おい! 早速始めんぞ!」
 部下に声をかけて、大工は早速仕事に取り掛かった。メイは、彼らに会釈した後、その場を離れようとした。餅は餅屋。メイはメイで、しなければならないことが山積みである。
「メイ」
 そんな彼女を呼び止める渋い声。五十代の渋いおっさんである。彼は、屋敷を下ったところにある、北の大国ルイメランに続く道を管理する関所の駐屯部隊の隊長、ガレンス=オルソンだ。メイは、彼の姿を見て萎縮した。ガレンスが、強面(こわおもて)だから――というわけではない。イデルが屋敷にいないときは、駐屯部隊にお世話になっており、イデルが兄のような存在ならば、このガレンスは非常に厳しい父親のような存在なのである。
「来なさい」
「はい」
 ガレンスに連れられて、関所の中にあるガレンスの部屋までやってきた。彼の内面を現すかのような、質実剛健の趣(おもむき)。木張りの床が、踏むたびにギシギシと音を立てる。
「状況を説明しなさい」
 ガレンスは、部屋の中央まで来るとくるりとメイのほうに向き直り、立ったまま話を促した。この部屋には、客をもてなすものなんてものはないのだ。
 メイは、自分が体験したことを、憶測を交えず淡々と語った。ガレンスとの付き合いは長い。どう話せばいいのかも、メイは熟知していた。
「事の始まりは、ネズミが食料を漁り始めた事でした」
 その食料を漁っていたネズミがどんどんと巨大化し、そしていつのまに『ネズ王』と名乗るほどの知性を持ったモンスターになっていた。エレンの森の中で巨大化した野菜を見たことも、この時付け加えておいた。メイに、エレンを庇(かば)う理由はどこにもない。
「あとはご存知の通りです」
 駐屯部隊に助けを求め、彼らと共に屋敷に戻ってきた時には、すでにネズ王の姿はなく、一匹の普通のサイズのネズミの死骸(しがい)があるのみであった。そして、屋敷の裏に勝手に森を形成していたエルフのエレンの姿も忽然(こつぜん)と消えていた。
「・・・ネズミのことはまだしも、エレンの失踪は問題だな。我々が見つけるのが先か、ダークエルフに殺されるのが先か」
 メイは、ガレンスの言葉に驚いた。
「ダークエルフに・・・? エレンが、なぜダークエルフに? 彼女は、罪人だったんですか?」
 ダークエルフ。それは、闇の精霊と契約したエルフのことであり、エルフの罪人を処刑する死刑執行者のことでもある。
「フェルムハラートから出たエルフは、例外なく処刑される。彼女は、イデルに保護されていたから、今まで生きていられただけだ。その保護がない今、ダークエルフに殺されるのも時間の問題だろう」
「・・・探さなきゃ」
 恐怖が体を駆けた。メイも学生だ。『エルフ問題』を知っている。フェルムハラートが鎖国を宣言したのが、三十年ほど前。その直後に出された『総エルフ帰還命令』。それを守らなかったエルフは、一部を残してダークエルフの手にかかって殺された。その数は、十万を超えるという。現在、フェルムハラートに対して宣戦布告を検討している国は数知れない。フェルムハラートに隣接しているここヒュランでも、この『エルフ問題』は関心が高い話題の一つである。
 エレンは、イデルの保護がなければ確実に殺される。それは『かも』とか『だろう』なんていう憶測を含まない。『絶対』、『確実』。このままではエレンは死ぬのだ。人がいつか死ぬように、そんな自然の流れとして。
「待ちなさい!」
 部屋を出て行こうとしたメイを、ガレンスは止めた。振り向くメイ。その瞳に込められた強い意志は、ガレンスにも怯まず美しく輝いていた。
「私は、行きます!」
「待ちなさい。落ち着きなさい。君は、彼女の事を何も知らない。闇雲に飛び出して、どうするというのだ。いいから、今は落ち着きなさい」
 ガレンスは、メイの両肩を掴み、視線を合わせて静かに諭(さと)した。メイは、唇を強く噛んでいた。何も力を持たない、己を悔やむように。
「・・・部屋に戻っていなさい。エレンは、我々が探す。見つけたらすぐに知らせる。だから、いまは休みなさい。その時が来るまで」
 ガレンスの言葉は、正しい。しかし、正しいものをただただ吸収できるほど、人間の器(うつわ)というものは出来が良くはない。ゆっくりと咀嚼(そしゃく)して、少しずつ浸透させていく。
「・・・お願い・・・します」
 辛うじて、それだけを言葉にして、メイは関所の中にある彼女専用の部屋へと向かっていった。それを見送った後、ガレンスは舌打ちをした。
「イデルめ・・・!」
 このような事態が起こりえることをガレンスは予測していたし、イデルにも再三忠告をしてきた。しかし、イデルは決してそれを受け入れようとはしなかった。イデルに対する怒りが増すのは、当然の事であった。
 部屋に戻ったメイは、崩れるように座り込んだ。エレンに対しては、なんら思い入れもない。問題なのは、イデルがエレンをメイに託して遠征に行ったということ。エレンがいなくなったとなれば、メイがその責任を負わなければならなくなる。
「勝手に出て行かないでよね・・・!」
 段々と怒りがこみ上げてきた。
 今は、とにかくこの恐怖と怒りに耐えるのみ。ガレンスがエレンを無事に見つけてくれる、その時まで――。

2. 安息の地を求めて
 交易都市マリュヘル。東の山を越えた先にある北の大国ルイメランとの交易の拠点となる、ヒュランの三大都市の一つ。マリュヘルは大きく分けて、旧市街と新市街に分けられる。その旧市街の東側、住宅が密集している地域のやや北、そこに小さな公園がある。エレンは、今そこにいた。
 早朝。日が昇ったことを感知したエレンは、茂みの中から姿を現した。茂みの中に結界を作って、夜が明けるまで潜んでいたのだ。
 耳まで隠れる大きな白のチューリップハットを目深にかぶるエレンは、しなやかに体をうんと伸ばした。茂みは小さい。体を丸くして隠れていたため、完全に体が固まっていたのだ。
「やっと日が昇った」
「そうやなぁ。今の所、ダークエルフは感知できんようや」
 エレンの声に反応したのは、彼女の肩に乗っかっている体長二十センチほどの茶色のトカゲ。ただの爬虫類(はちゅうるい)が言語を解(かい)するわけがない。見た目はトカゲでも、ちゃんとした精霊――エレンと契約を結んでいるイフリルという名前の精霊である。
「そう、さすがに街中では襲ってこないのね。それとも、この町にいることが知られてないのかな」
「追手は、旦那が殺してしまったからな。もしかしたら、まだ見つかっていないかもしれんの」
 旦那とは、エレンを助けたイデルのことである。
「でも、奴らの目ざとさは別格や。早いうちに、逃げたほうがええ」
「そうね。どっちにしたって、ここには長居できない」
 エレンが振り返った先には、住宅街が広がっており、その先に小高い丘が見えた。その丘には、イデルの屋敷がある。
「イフリル、どっちに行けばいいの?」
 未練を、後悔を、振り払うように背を向けた。
「旧市街を抜けて、新市街を抜けて、そこから街道に入って、途中から北上や。人間も手を出していない原生林が、その先にあるんや。今は、そこに潜むしかないやろう。ちと・・・いや、かなり寒いがな」
「寒くても、命を失うよりかはマシよ。行きましょう」
 エレンは、新市街に向かって歩き始めた。
 まだ朝が早いため、住宅街は静けさに包まれている。中央通りに出てしまうと、この時間帯でも人が通っているため、住宅街を縫うように進んだ。
 エレンの歩みは遅い。エルフは、狩人と職人とに分けられており、エレンは職人のほうであった。家の中に閉じこもって、日用品や工芸品を作る毎日。そのため、ほとんど外を出歩いた事がないのだ。エレンの息は、すぐに上がってしまう。
「大丈夫か、お嬢?」
「平気・・・その内、慣れるわ」
 住宅街の様相が変わってくる。今までは木で作られた建物が多かったが、徐々にレンガ造りの建物が増えてくる。旧市街の中心部に近づき始めたのだ。人の気配も段々と多くなっていく。
「・・・お嬢、もう戻りませんか? 悪気があったわけやないし、謝れば許してもらえるんやなかろうか」
 エレンは、一旦足を止めて、呼吸を整えた。
「私がいれば、迷惑になるわ。どっちにしても出て行かなければいけなかったの。ただ、予定よりも早かっただけよ」
 イフリルは、溜息を吐いた。エレンが頑固なのは昔からである。この先の長い道のりを、エレンの足で踏破できるのかは、甚(はなは)だ疑問であったが、それを告げたところで彼女は歩くのを止めないだろう。彼女が弱音を吐くまで、待つしかなかった。
 細い路地を抜けると、急に視界が開ける。マリュヘルの旧市街の中心部にやってきたのだ。ここは、ヒュラン鉄道の終着駅であるマリュヘル駅が存在する。東と西の物資が一つに集まる所。その賑わいは、三大都市の名に相応しいものであった。
 すでに時刻は、八時を回っている。今までとは桁違いの人の多さに、エレンは戸惑いを隠しきれない。蒸気車の煙に咽(むせ)て、涙目となっていた。
「さすが、マリュヘルの中心部やな。大丈夫か、お嬢?」
「・・・平気」
 あくまで弱音を吐くつもりはないらしい。
「それよりも、奴らの気配と・・・ここ、そのまま突っ切っても大丈夫なの?」
「ダークエルフの気配はさすがにないな。そろそろあの家の子も気付いている頃合やから、迂回しているほうが時間を食うでぇ。人ごみに紛れで、新市街まで行くしかないなぁ」
「そう・・・」
 帽子が飛ばないように抑えつつ、雑踏の中を進んでいく。
 マリュヘル駅前を通る大通りを渡り、少し北上。大通りが途中から西に分岐しているので、それに沿いつつ新市街を目指した。
 旧市街は、その名の通り昔からある古い町だ。レンガ造りの町は、コンクリート造りの町へと変わっていく。新市街は、鉄道が引かれて出来た。首都は、風竜王が空を飛ぶのでそれを懸念して高いビルを建てられないが、中央都市マンチェイロ、そしてここマリュヘルの新市街は、現在の技術の粋を集めた高層ビルが立ち並んでいる。
 マリュヘルを東から横断してきたエレンは、いままでの町の歴史そのものを歩いてきたようなものであった。
 左手に鉄道が走っているのが見える。鉄道は新市街の端にあるマリュヘル西駅を通過して、マンチェイロへと向かっている。
「鉄道沿いは人が多いから、襲撃される心配はないはずや。気になるのは、警察の目ぐらいやなぁ」
 イフリルは、周りを警戒している。ここでは彼の言う通り、ダークエルフよりも家を出たエレンを探している、警察か――まさか軍隊まではないだろうが、そういう連中の方を気にすべきであった。しかし、特に問題などなく、エレンはヘトヘトになりつつも新市街を抜けた。新市街で働いているが賃金が思わしくない人たち、低所得者のための住宅街を抜けると、広い平野へと出る。ここから先は、しばらく街道と農耕地だ。街道から少し離れたところに、鉄道は走っている。昔は、鉄道側の道を使っていたが、蒸気の煙を避けて今は、エレンが歩いている街道を好んで使われるようになった。
 鉄道を使えない人や、鉄道以外で運搬するほうが効率が良い人などで、街道は賑わっている。出店で、クルミのパンを購入する。鉄道に乗れるほどの金は持っていないが、食事を買える程度の金は、エレンの手元にはあった。もしもの時を考えて、森を出たときに持ってきていたものを、イデルに換金してもらっていたのだ。エレンは、エルフであるためいざとなれば、草木からエネルギーをチャージできないこともないが、非常に効率が悪い。そもそも、その方法で生きていられるのであれば、エルフの消化器官は退行して、物を食べることができなくなっていただろう。今でも普通に食物を摂取できるという事は、それだけ必要とされているということである。
「凄い人ね。町を出てもまだ・・・」
 エレンは体を小さくしている。
「三大都市を結ぶ最大の街道やからなぁ。極端にこの辺りだけ、人が多いんや。ちょっとでも北か南へ行けば、誰もおらんのがこの辺りの特徴やな」
「そう・・・南は、フェルムハラートがあるしね。北は・・・寒いんでしょ?」
「北にはなにもあらへんからなぁ。山を越えた先は極冠の大地や。流通するもんがなんもない。大量の資源が眠っていると訴える学者もおるが・・・あんなところに眠っている資源を掘り出すくらいなら、他の国から輸入したほうが安いっちゅうもんやなぁ」
「イフリルは、物知りね。昔からそう思っていたけど、驚いたわ。何でも知っている」
「こんなこともあろうかと、情報収集しとった成果や」
「ありがとう。私があそこにいた間、色々としてくれていたのね」
「それが、俺の役目やからな」
 イフリルは、少し照れくさそうだった。
「お嬢、さすがにここら辺で一回休憩したほうがいいでぇ」
 町から少し離れ始めたところで、イフリルがそう切り出してきた。エレンは、結局一度も休まず黙々と歩き続けていたのだ。
「・・・平気」
「いや、休憩したほうがえぇ。もう少ししたら、北へ走る街道に出る。そこからは、次の町まで休む所なんてない。夜になるでぇ、下手したら」
「夜・・・そう、さすがにそれは辛いかも。分かった。茂み・・・」
「そこの川に入りなさい」
 エレンの背後、いつのまにかイフリルと同じぐらいの大きさの少女が一人宙を浮いていた。体は不定形な青色――エレンと契約している水の精霊『ウィデル』である。
「ウィデル・・・あなたまで出てこなくても」
「少しでも多く休みなさい。結界は、私が維持してあげるわ」
「ちょいまち、俺はどうするんや? 水の中には入れんでぇ」
「アンタは、外で見張ってなさいよ。適材適所、地味な役割がお似合いですわ」
「・・・燃やすぞ、ゲル野郎!」
「トカゲに出来て? これを契機、『アイス・リザード』なんてのも宜しくてよ」
「お前ら、いい加減にしろ」
 一触即発の間に入り込んできたのは、アルマジロのような姿の精霊。背中は、石でできている。エレンが契約している精霊ノールムル。イフリル、ウィデル、ノールムル、これでエレンが契約している精霊は全てである。
「ノールムル・・・? 止めにきたの?」
「お前がどうなろうが、俺には興味はない。ただ、小うるさいのが我慢ならなかっただけだ」
 ノールムルは、それだけ告げて消えてしまった。
「・・・いわゆるツンデレという奴かしら? 相変わらず、面白みのない石っころですわね」
「液体女の言葉に同意はしたくないが・・・俺もそう思うでぇ。頭も心も、ゴツゴツや。あそこまで言わせておいて、ええぇんか」
「・・・ウィデル、結界をお願い。疲れたわ」
 ウィデルと共に、エレンは川の中へと姿を消した。

3. 襲撃
 関所の作戦室。一番高いところに、隊長であるガレンスの席があり、前方に大きな空間がある。それを囲むように、オペレーターが座っている。前方の空間は、下部に設置された照射機を通じて、情報が展開する仕組み。今そこにはマリュヘルの地図が、二次元の図面として浮かんでいた。
 それを見つめるガレンスと、側で控える中年の男。関所の魔導師の長であるパイロンド=オルスマイヤーである。ゆったりとした黒いローブを身に纏い、顔は面長で冷たい印象を受ける。
「意外にてこずっているようですね」
「世間知らずのお嬢さんだと思っていたんだがな」
「・・・エルフである以上、よほど賢い精霊を従えていると推測できますね。困ったものです。無駄な時間が増えてしまいます」
「苦情は、イデル宛だ」
「承知しておりますよ。あの若造、帰ってきたらどうしてくれようか。欲しい材料は山ほどありますし、それともあの実験の実験体になってもらうのも・・・」
『ゴブリン1から、ボスへ。駅周辺に、お姫様の姿はありません』
 パイロンドの言葉を遮って、通信が飛んでくる。ボスは、ガレンスのこと。ゴブリンは、部下達のことで、お姫様がエレンのことである。
 現在、ガレンスは部下達を使って、エレンを探させていた。エレンがエルフであることを知っているのは、ガレンスとその一部だけ。そんな彼女を探し出すのに、警察は使えない。そもそも、町の警察と関所の駐屯部隊は、犬猿(けんえん)の仲。協力を申し込んだら、どんな見返りを要求されるか、分かったものではない。そのため、町に潜っている部下達も目立たないように、エレンを探すしかなかった。もし、このことが警察に知れたら、どんなペナルティを掲示してくるか――確執が、捜索をさらに難しくしていた。
『ゴブリン3から、ボスへ。好みの幼女を発見したので、追跡します』
『ゴブリン1から、ゴブリン3! お前、なに言ってやがんだ! ボス、ゴブリン3の討伐命令を申請する! 奴は、危険人物だ!』
『ゴブリン4から、ボスへ。腹が減りました。ご飯ください』
『ゴブリン2、これはいくらなんでも分が悪いぜ。お姫様は、ばっさり辻斬り完了に三万円だ』
『ゴブリン1から、ゴブリン2! てめぇ、後から鼻ケチャップの刑にしてやる!』
『ゴブリン4、ホットドックが食いたくなったので、店を探してきます』
 ガレンスは、飛び交う馬鹿な会話を完全にスルーしていた。彼らは、なんだかんだ言いつつも、ほっとけば仕事をするのだ。ここで口出しすれば、余計に面倒な事になるだけなのである。
「相変わらず、馬鹿な連中ですな」
 パイロンドも、すっかり慣れているので表情を変えずにぼやく。ガレンスは、肩肘をついて、小さく溜息をついた。
「・・・有能な連中なんだがな」
「馬鹿にしておくのにはもったいない連中である事は認めます。あぁ、分かりました。有能な人材というのは、すべからくどこか人として欠陥品でなければならない、そういう真理なのかもしれません。これは、素晴らしい真理だ」
「そんなクソみたいな真理などいらん・・・! お前ら! いい加減にしやがれ! あの子が泣いてもいいのか! もし、見つからなかったら、あの子の相手はお前らがしろ! 泣き止むまで、帰さんからな!!」
 分かっていても、我慢の限界というのは来る。ついに、ガレンスが突っ込んでしまった。
『ゴブリン3、メイちゃんは私が美味しく頂いていきますので、あしからず』
『ゴブリン1から、ボスへ。ゴブリン3の射殺命令を申請します・・・!』
『泣いているメイちゃんを優しく撫で回すのか。それは、実に美味しいな』
「変態の集いですね。やはり、有能な連中は人格に問題があるようです。これは、真理です」
「ボスから、ゴブリンどもへ・・・いいから仕事をしやがれ!!」
『ゴブリン4から、ボスへ。お腹が空きすぎて死にそうです』
 そんな状態でありながらも、彼らはやはり有能なのだろう。二十分後、有力な情報が飛び込んでくる。
『ゴブリン3から、ボスへ。お姫様と思わしき少女の情報を得ました。新市街へ向かう大通りを西へ進んでいたそうです。目深く帽子をかぶっていたとのこと、肩にトカゲのような生き物が乗っていたこと、合わせて極めてお姫様の可能性が高いかと』
「トカゲ・・・精霊ですな」
 ガレンスの瞳にも活力が宿る。
「周辺地図を展開! 西か、どこへ向かう?」
 マリュヘルの周辺地図が、瞬時に展開される。
「・・・北ですな」
「根拠は?」
「南は論外。西は、隠れる森があまり多くはありません。ならば、北。シャラロル山脈の原生林地帯。あそこに逃げ込まれれば、私たちはおろか、ダークエルフたちでさえ補足するのは難しいでしょう」
「よし、ボスからゴブリンどもへ! ゴブリン1と2は、北へ続く街道を押さえろ! ゴブリン3は新市街を、ゴブリン4は念のため、西への街道だ!」
『ゴブリン4から、ボスへ。よりにもよって、ボクが一番遠いです。若い連中か、痩せている連中で、お願いします』
「お前は少し痩せなければならない。ぐだぐだ言うと、夕食を規制するぞ!」
『ゴブリン4、可及的速やかに現場へ向かいます!』
「さて、これで見つかりますかな。見つからなかった時は、隊長の顔はドロだけですな。あの子に泣かれるのは、私も正直辛い所があります。どうなぐさめるか、考えておりますか?」
「必要ない。それは、俺の役目ではないからな」
 ガレンスは、そうきっぱりと言い放った。

 水の揺らぎと煌き。それがすっと解け、眩い太陽の光が届いてきた。川から出たエレンは、のどかな田園風景に囲まれた土手に姿を現した。そこは、川に潜った場所とは違う場所であった。
「・・・ここは?」
 エレンの肩にイフリルが飛び乗ってくる。
「街道は、エレンを探しているっぽい連中がおってなぁ、ちょっと下流に下ってきたんやん。少しは休めたんか?」
「えぇ・・・助かったわ。今、昼前ね」
 太陽の傾きから、エレンはそう判断した。早朝に出て、あの川までがおよそ三時間。一時間ぐらいは休憩した事になろうか。
「ありがとう、ウィデル」
 ウィデルは、笑って手を振った後、虚空に消えた。契約がある以上、表に出ている間はエレンの魔力提供を受けてしまう。その負担を軽減するために、ウィデルは早々に姿を消したのだ。
「イフリル、どっち?」
「上や」
 川とは反対方向をイフリルが頭で示す。低い草で覆われた土手をよじ登ると、一気に視界が広がった。広大な田園風景。いくつもの細い畦道(あぜみち)が、網の目のように走っている。人の姿はまったくなく、少し肌寒い風がエレンの髪を優しく撫でていく。帽子が飛ばないように押さえ、エレンはさらにその向こう側の景色に目を奪われていた。
「・・・あれが目的地?」
 視界を遮る、巨大な山脈。雲を貫いており、頂上は見えない。そのあまりの大きさに、エレンは己の矮小(わいしょう)さを知る。
「シャラロル山脈や。ランダイル大陸で最大の山やな」
 ランダイル大陸とは、今エレンがいるこの大陸のこと。惑星イルシュでは、最大の面積を誇る大陸である。その広いランダイル大陸の中で、一番大きな山。それは、まさに神の鎮座する座席のような、荘厳(そうごん)さをかもし出していた。
「ダークエルフはおらん・・・か。畦道を抜けて、山を目指すで」
「・・・静かな所ね」
 耳鳴りのするような静けさ。今は、風の囁きしか聞こえない。
「どれぐらいかかる?」
「お嬢の足で、二週間もあれば余裕やな」
「二週間・・・あんなに近くに見えるのに」
「距離にして、三百キロ程度はあるでぇ、あれでも」
「三百キロって言われても、分からないわ」
「今まで歩いてきた距離が、およそ十キロ程度やな」
「・・・遠いね」
 距離が実感でき、しみじみとエレンはそう呟いていた。
 イフリルの指示に従って、畦道を進む。今は、新緑の季節。青々しさが、眩いほどである。会話もなく、黙々とエレンは歩み続ける。その心に、後悔と後ろ髪を引かれる思いを募(つの)らせながら。
「・・・?」
 エレンが不自然な事に気づいたのは、それから間もなくの事であった。先ほどと変わらず静かな場所であるが、その静かさの『具合』が妙な事に気付いたのだ。今までの静けさは、自然の出す音以外存在しないという、そんな静けさ。しかし今は、その自然の音さえも押し黙っているような、異様な静けさになっていた。エレンが歩む音も、大きく聞こえる。
「変ね」
 事が起こったのは、それから刹那(せつな)の後――!
「お嬢、前方にダークエルフや!」
「えっ?! ど、どこ?!」
 前方と言うが、ダークエルフの姿などどこにもない。エレンもイフリルも咄嗟(とっさ)の事で、失念していたのだ。ダークエルフは、肉眼では捉えられない。『影覆い(インビジブル)』と呼ばれる魔法のせいだ。この魔法は、常に特殊な波長を放つ魔法で、その波長は瞳を通して脳に直接働きかけ、『見えている』という情報を『見えていない』という情報に書き換える。こうすることによって、肉眼的には見えてはいるはずだが、認知できない、すなわち『見ることが出来ない』状態となるのだ。
 エレンの失念は、そのことを忘れていた事。そしてイフリルの失念は、自分が見えているものがエレンに見えていないことを忘れていた事だ。
 インビジブルを破る方法は、いくつかある。イフリルは、常にアナライズを施行していた。そう、いくら『見ることが出来ない』状態でも、それは脳がそう判断しているに過ぎない。フィルターを通す事で、簡単に破ることが出来るのだ。そのため、イフリルにはダークエルフの姿が、『データ』として見えていた。
「そうやった、今、リンクしちゃるけん・・・!」
 イフリルの持っている情報を、エレンに繋げようとしたその時、エレンが崩れるように前方へと倒れた。その背後には、黒いローブを纏う――別のダークエルフの姿があった。
「しまった・・・!」
 ダークエルフは、単体では動かない。彼らは、必ずチームで動く。前方のダークエルフにアナライズの的を絞ったため、背後のアナライズに空白が出来た。その間隙(かんげき)を別の場所に潜んでいたダークエルフに突かれたのだ。
 エレンが奪われる。イフリルだけでは、ダークエルフに対抗できない。恐怖と絶望が体を駆けたその時――。
「悪いけど、その子は譲ってあげられないの」
 イフリルは、軽い調子の女の声を聞いた。

4〜6は、http://47762756.at.webry.info/200912/article_4.html

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2009/12/04 12:02
定期活動報告
無限のフロンティアの続編に、アクセルとアルフィミィが参戦するようですね! http://www.famitsu.com/game/coming/1230108_1407.html アルフィミィが、動いているー。なんだか感動だ。アクセルのほうは、通称『アホセル』のA版のようで。OG版は『悪セル』らしい(苦笑。 外伝のツンデレ振りが結構好きだったのですが、これはこれで。アルフィミィは、どっちにしても技がえげつない(苦笑。 この子、OGでは自壊し、OG外伝でアクセルを経由して奇跡の復活を... ...続きを見る
堕天王の逝く道
2009/12/05 15:47
定期活動報告
土日が休みと珍しい、堕天王です。 久し振りに、月〜金まで働きましたヨ。 ...続きを見る
堕天王の逝く道
2009/12/12 17:00
エレンとメイ
メイ:「ねぇ、エレン・・・聞いていい?」 エレン:「何?」 メイ:「あの・・・怒らないでね」 エレン:「どうしたの?」 メイ:「えと・・・エレンって・・・何歳なんだろうな・・・って。あの、今更ながら、呼び捨てにしちゃってることとか・・・良かったのかなって・・・」 エレン:「エレンでいいわ。年齢は・・・内緒にしましょう」 メイ:「えぇー! 教えてくれないの?」 エレン:「では、永遠の十七歳ぐらいで」 メイ:「そんな事を言うてことは・・・相当な年齢ってことね・・・エレン姉さんと... ...続きを見る
堕天王の逝く道
2010/01/11 22:22
MeIderuEren『MeIderuErenの旗が揚がるまで』 2話 執筆中
少しずつ、出来てきたので上げておきます。 これから夜勤なんで、バタバタと。 2話は、そんなに長くならないと思っているので、区切りをつけておりません。 今のところは。 ...続きを見る
堕天王の逝く道
2010/01/22 15:24

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MeIderuEren 『MeIderuErenの旗が揚がるまで』1話 0〜3 完成 堕天王の逝く道/BIGLOBEウェブリブログ
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