堕天王の逝く道

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zoom RSS 由紀子・夏樹編 第七話 聡の就職先

<<   作成日時 : 2008/06/19 08:42   >>

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すいません。昨日は、『機嫌』が悪くて、ブログをパスさせて頂きました。
たまにあるんですよね。ストレスが溜まりすぎて、イライラカリカリしてしまう日が。
だいたい、3〜4ヶ月周期でやってきます。その時は、ろくなことを考えていないので。
主に、『あぁ、死にたい』と呟いていました(笑。
一過性のうつなんでしょうね、多分。

昨日、午前中は機嫌良好だったため、COMITIAに応募してきました。
あそこは、100%通るんでしょうかね。通るならば、COMITIA確定です。
PhantomFiveではなく、九州創作合同誌企画で参加。
理由は、文芸で出るよりかは、イラストと漫画が含まれている合同誌の方が、COMITIA向けかと思ったからです。
初COMITIAで、ございます。



さて、昨日の更新分を・・・と言っても、今日の朝に書き直しを終えたのですが、第七話を掲載いたします。
題名も内容も、改訂前とほぼ同じで、視線をただ固定しただけです。
本当は、しばらく由紀子、夏樹、椿の三人で世界観を見つめて行きたかったのですが、第七話は、聡編が合流する所。どうしても、別の視点がないと書けなかったので、視点を少し増やしています。最後は、まるまる聡編なんで、聡の視点なのですが、この伏線が後半戦で生きてくるので、絶対不可欠かと思い、残しました。
あぁ・・・て、名前が出ていないキャラだから、紹介できなかったや。名無しの笑顔魔人である彼女もまた、沙夜と似たようなキャラの成り立ちで、とある方の小説に出したゲストをそのまま採用しています。この方だけの話も実はあり、のちのち聡編へと食い込んできます。結構、好きなキャラなんですが、前半は出番が少ないです。悲しい。
職業探しの話は、私の妄想たっぷり、実際とはかけ離れたものとなっていることは、認識しております(苦笑。
夏樹のフラグをとりあえず、立てまくる。
立てれば立てるほど、面白くなると思っていますので。後半戦が。


 第七話 『聡の就職先』

 ゴールデンウィークであるが、夏樹は部活である。他の部員は、運動場を勢い良く走り回っていたが、夏樹は憮然とした表情で、小石を蹴飛ばしていた。
「おもんない。あぁ、おもんない! なんで、部活休ませてくれないのかな。せっかく、ユッキーとお出かけできると思っていたのに」
 それが、夏樹が不機嫌な理由。部活は嫌いではない。走る動機を十分に与えてくれる。だが、友達と一緒に過ごす時間が削られるのは、夏樹としてはあまり嬉しくない事であった。
「虹野先輩、荒れていますね」
 マネージャーの明美が、苦笑している。
「新人の面倒を見ろとか、なんとか。私は、人に教えるの得意じゃないのに。ほら、一年! 休まず、死ぬまで走れ!」
 完全な八つ当たりである。そんな夏樹の頭をベシッと叩いたのは、顧問の坂田先生。明美は、逃げていった。
「アンタも走れ! そして、ちゃんと教えろ!」
「はいはい。走ればいいんでしょう。もう、坂田先生・・・そんなんだから嫁に行き遅れるんだよ」
「なんか言った?」
「なんでもないで〜す」
 坂田先生は、困ったものだと溜息を吐いていた。
 部活は午後もあったが、色々と事情があるとごねて、逃げ出した。貴重な休みを一日潰すなんて、とんでもない。
 夏樹は、まっすぐに帰らずに大木公園に立ち寄った。今日は休日。もしかしたら聡が、昼間でもいるんではなかろうか。そう思ってのことである。彼とは、大木公園で待ち伏せして会うしか方法がない。連絡先を知らないからである。どこで働いているのかも分からない。あとは、運に頼るのみ。
 守り木が鎮座する中央へとたどり着く。聡はいた。いつものようにベンチに座って、暇そうにしている。
「聡さん、こんにちは」
 駆け寄ると、聡は『よっ』と声をかけてきた。しかし、いつもに比べるとどこか表情が暗い。
「部活の帰りか?」
「うん。ところで、聡さん。なんか、今日微妙に暗くない?」
「えっ? そ、そう見えるか。気のせいじゃないのか?」
「嘘、へたくそすぎ」
 聡は、諦めたようにため息を吐く。夏樹は、彼の隣に腰掛けた。
「悩み? いつも話、聞いてもらっちゃっているし・・・相談に乗るよ。まぁ、私に出来る事なんてないかもしれないけど・・・」
 頬をポリポリと掻く夏樹。どこか照れくさそうである。
「・・・ん、いや、恥ずかしい話なんだよな、実際」
 どこか言いにくそうな聡。
「私、口は堅いよ」
「そうか」
 聡は、笑った。吹っ切れたのだろう。
「俺さ、実は就職先を探していてさ。それが、やたらと落ちるんだよ。まず名前を言うと、『ん?』という顔をして、顔を見て『お帰り下さい』って・・・やってられるかぁ!!」
「・・・そんなことが実際あるの?」
 不思議そうに夏樹が言う。彼を疑っているわけではないが、あまりにも常軌を逸した話だったのだ。
「あぁ、もうそれで四社落ちたよ。何の冗談だ、全く」
「四社も! 聡さん、実は名を馳せた犯罪者とか・・・じゃないよね、どう見ても」
「この顔にピンときたら、雇用しないで下さい。てな具合に、はねられるんだが。納得がいかん」
 どういう理由かは分からないが、聡は今まで門前払いを受けてきたようである。彼の名前と顔に、何があるというのだろうか。四社も続くと、単なる偶然だとは言いがたい。
「ねぇ、聡さん」
「ん?」
「かなりいい感じに看板が傾いている所がありまして、余命幾ばくもないかもしれないそこが、採用! て叫んだら、働いたりする?」
 夏樹は、両手で看板の傾き具合を現して見せた。
「まぁ、働かせてくれるというなら、この際どこでも構わないが」
「なら、聡さん。ウチで働いてみない?」
「はっ?」
「ウチ、印刷所なんだけど、人手、特に男手が足りないみたいなんだ。なんだったら、お母さんに話してみるけど・・・」
 聡が目を輝かせる。
「マジか! 頼む、なんでもするぞ、俺は!」
 喜びを体全体で表している聡。彼の役にたてることが、夏樹も嬉しかった。
 早速夏樹は、聡を連れて家に帰った。今日は休みのため、母親は居間にいるだろう。聡に、家の外で待ってもらい、夏樹は母親がいるだろう居間へと向かった。
「お母さん、ただいま」
 母親は、居間で新聞を読んでいた。
「おかえり。随分、早いね。今日は、一日部活だったんじゃないのか?」
「半日になったんだ」
 さらりと嘘を言う。母親は疑いもしない。夏樹が常日頃、真面目なおかげである。
「そんなことよりも、ねぇ、母さん。就職先を探している知り合いがいるんだけど、話を聞いてもらえないかな」
「高校生はダメだよ。バイトは受け付けてない」
「そうじゃなくて、ちゃんとした大人の人だよ。就職先が見つからなくて、困っているんだって。ねぇ、話を聞いてあげてよ」
 母親の瞳が、ギラリと光った。
「それは男かい?」
「そうだけど・・・」
「どこの馬の骨かは知らんが、ウチの娘に手を出す奴は、ウシガエルの餌にしてやる!」
「お母さん! マジメな話なんだよ! 本当に・・・困っているの! 話を聞いてくれないて言うなら、夏樹、家出するからね!」
「うっ・・・分かったよ。もう来ているのかい?」
「うん、外に」
「事務所に通してやれ。話だけは聞いてやる」
 最後の意地か、母親はそう言った。
「ありがとう、母さん!」
 夏樹は、母親に抱きついた。

 娘に頼まれたからには仕方がない。美津子は、聡の面接をしてあげることにした。
「名前は、神山聡・・・ね」
 大型連休中。面接に行く予定がなかったのだろう。彼は、履歴書を持っていなかった。彼の口から直接名前を聞くと、美津子も他の面接者と同じように難しい顔をした。美津子も、聡のことを知っていたのだ。
「あの、最初に言っておきたい事があるんですが、宜しいですか?」
 おずおずと手を上げている。『ん?』と美津子は、先を促した。
「あの子には伝えていないのですが・・・」
 あの子とは、夏樹のことであろう。
「私は、記憶喪失なんです。今年の四月三日以前の記憶が、私にはない」
 突然、何を言い出すのか――そう思ったが、彼の表情は真剣そのものであった。
「なにも覚えていない・・・と?」
「はい」
 美津子は、苦笑した。
「仮にそれを信じるとして、なぜここで言う? 不利になるだけだろう?」
「それは、他の所では言いませんでした。けど、好意で面接をして頂いているというのに、嘘は言えません」
「・・・マジメなんだね、アンタ。いいよ。あんたのその気骨、気に入った! 採用しよう」
「本当ですか?!」
 聡は、目を輝かせている。
「あぁ、実際人手が足りないし、特に今は男が一人もいないんだ。君は、体つきもしっかりしているしね。ウチの社員たちよりも、マジメそうだし。働きたいというならば、こちらも断る理由がない。記憶喪失ってことは、診断書とかは?」
「それが・・・病院には・・・行けというならば、行きます」
「いや、いいよ。あって困るものでもないが、なくても困らない。戸籍とかは・・・分からないよな。印鑑だけでも、連休明けにもってこい」
「はいっ! ありがとうございます!」
 聡の元気な挨拶に、美津子は満足げに笑った。深々と頭を下げて出て行く聡。それを見送った後、美津子は一転して渋い顔をした。
「悪い男ではないが、記憶喪失で、神山聡か・・・厄介ごとになる前に、口止めをしておかないといけないね、アイツらに」
 美津子は、タバコに火をつけ、煙をくゆらせた。

 夏樹は、事務所のオフィスチェアに座り、聡が戻ってくるのをそわそわと待っていた。就職先を斡旋したまでは良かったが、採用するかどうかは母親にかかっている。もし、不採用となれば、追い討ちをかけることになってしまう。そうなってしまった場合、もう二度と聡と話が出来なくなる可能性もある。不安を抱えて、夏樹は待つ。聡が出てくるのを。
 聡が美津子と話をしていた時間は、五分程度であった。そんな短い時間でさえ、夏樹には長く感じられた。
 社長室の扉が開き、聡が出てくる。夏樹は、跳ねるように立ち上がった。
「どうだった・・・?」
 不安げに尋ねる。そんな夏樹に、聡は親指を立て、ニカリと笑った。夏樹の表情に、一気に笑顔が咲く。
「よかった! おめでとう!」
「夏樹と、夏樹のお母さんのおかげだよ。本当に、感謝してもしきらないぐらいだ!」
 聡は体全体を使って喜びを表現していた。
「本当にありがとうな!」
 聡が、虹野印刷所に就職した。それは、会う機会が増える事でもある。『うん』と頷く彼女の微笑みは、いつになく輝いていた。

 今日の夕飯の買い物を商店街で済ませた聡は、一休みするために大木公園へと立ち寄った。彼の今の住まいは、山の中腹に位置する。少し休憩してからではないと、登ろうという気力が湧いてこないのである。
 いつものように大木公園のベンチに腰をかける。
 遂に就職先が見つかった。嬉しくて、拳をぐっと握ってしまう。これで一緒に住んでいる琴菜の顔色を窺わずに済む。金はいくらでもあるという彼女であるが、それに甘えているわけにはいかない。くだらないかもしれないが、それが男のプライドという奴である。
 日はまだ高いが、うかうかしていると山登り中に夜になってしまう。夜の山道は、危険で怖い。何気なく立っている『野犬注意』の看板を見ると、心臓が縮み上がる。
 買い物袋を持って立ち上がる。その時、背後から声がかかった。
「お荷物、お持ちいたしましょうか?」
 びっくりして振り返ると、さきほど聡が座っていたベンチに、美しい女性が座っていた。髪の長さは、腰の辺りまであるだろうか。服装はスーツであるが、雰囲気からしてOLとは違っていた。不思議な笑みを浮かべ、聡を見つめる謎の女性。いったいいつからそこにいたのか――実は俺が座る前からいたの? そんな馬鹿げた思いさえ、あざ笑えなかった。
「ふふふっ、驚いていますね。心配なさらないで。気配を断つのは、わたくし、誰よりも得意ですの。声を書ける前に気付かれてしまっては、私の輝かしい戦歴に傷が付きますわ」
 言っている意味が、いまいち把握できない。なんの戦歴だというのだろうか。
「今日は、聡様に渡しておきたいものがありまして。就職が決まったご様子なので、ちょうど宜しかったですわ」
 女性は、A4サイズの封筒を聡に手渡してきた。
「これは?」
「百聞は一見に如かずですわ」
 溜息を一つ。話をしにくい相手である。仕方ないので、封筒の中身を見ることにした。中に入っていたのは、幾分か上等の紙が一枚。取り出してみてびっくり。それは、聡の戸籍謄本であった。
「君は・・・俺を知っているのか?」
「えぇ、少しばかり。勝手ながら、戸籍は櫻町に移させていただきましたわ。その方が、都合が宜しいかと思いまして」
 住所が、見たこともない住所になっている。
「これ、どこだ?」
「聡様が今住まわれている、ログハウスの住所ですわ」
「へぇー、あそこって、そのまんま若草だったんだな・・・って、アンタ、何者だ?!」
 素直に感心している場合ではなかった。女は笑う。ただただ笑い続ける。その笑顔に、実は何も含まれていないことに、聡は気付いてしまった。
「私が何者であるか、それは聡様にとっては、大した問題ではございませんわ。聡様に必要なのは、覚悟でございます。過去がなくても、人は生きていける。新たな思い出を育んでいける。でも、過去を捨てるということは、共に過ごした人を切り捨てることにもなります。聡様の過去は、辛い思い出がたくさん詰まっております。それから目を背けることが、記憶の喪失だったのかもしれません。それを良くお考えになり、そしてあなたのあなたらしい決断をしてください。わたくしは、あなたを傍でお守りしております」
 瞬きの瞬間、女性の姿はまるで幻であったかのように、立ち消えてしまった。どこにもいない。ただ、夢ではない証拠に、彼の手には戸籍謄本が残されていた。
「・・・必要なのは、覚悟か。確かに、そうかもしれない」
 彼女の言葉は、納得が出来た。少しであるが、聡も記憶の断片を得ている。ほんの僅かなそれだけでも、過去を取り戻すことに恐怖を感じた。だが、彼女が言うとおり、過去を捨てれば、共に過ごした人をも切り捨てることになる。それが正しいとは、到底思えない。だが、正しくはないが、それを選ぶ事が悪い事なのかというと、そうとは言えない気もしていた。忘れてしまいたい過去は、誰にでもある。忘れたままでいいなら――。
 聡は、溜息をついて、空を見上げた。
 守り木に阻まれて、空を見渡すことは出来ない。枝葉の間から覗く、青い空。
 聡は、静かに眺めていた。

 END


第八話は、由紀子の視点で物語が動きます。
そろそろ三角関係が確立してくる頃合かと。
まだなにも作業に入っていないので、更新は少し遅れるかもしれません。

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