堕天王の逝く道

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zoom RSS 長編小説その6

<<   作成日時 : 2008/02/06 22:42   >>

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最近、仕事がとっても忙しいです。色々とありまして。
頭もフラフラするしね。

今日は、別にネタもないので、小説だけ置いておきます。
では、どうぞ。

由紀子・夏樹編 1〜12話
http://www5f.biglobe.ne.jp/~pfive/tyouhen/yukine1.html
13話
http://diary5.net4u.org/scr3_diarys.cgi?action=article&year=2007&month=8&day=20&cat=2714datenou
14話
http://diary5.net4u.org/scr3_diarys.cgi?action=article&year=2007&month=9&day=28&cat=2714datenou
登場人物
http://www5f.biglobe.ne.jp/~pfive/tyouhen/cyara.html


 由紀子・夏樹編 第十六話『悪夢の始まり』 その6

 無造作に開かれる教室の扉。何も言わずにまっしぐらに突進してきた彼女を、いつもの調子で『よっ』と左手を上げて出迎える。
「ちょっと聞いてよ、更紗(さらさ)!」
 挨拶も抜きに彼女――井上藍は、会話を切り出してきた。そんなことは日常茶飯事なので、更紗もまるで気にしていない。
「分かった。聞いちゃる。だけん、とりあえず座れ」
 藍は、素直に前の席にどかっと勢いよく座る。感情的になりやすい彼女であるが、ここまで怒っているのはさすがに珍しい事であった。
「納得がいかないのよ、どうしても」
 藍は、今朝あった小泉由紀子とのことを全て伝えた。黙って全てを聞いていた更紗は、『珍しい』と呟いた。
「アンタが、そこまで燃えるなんて」
「私は、イジメとかそういうの虫唾が走んのよ。なんというか、言いたいことがあるなら表に出てきやがれ! 度胸がないなら、隅で丸くなってろ! て思うのよ」
 藍らしい言い分に、更紗は薄く笑う。
「そうかい。でも、空回ったわけか」
「そうなのよ」
 どうして由紀子が、犯人を探そうとしないのか。腑に落ちない藍。あまり考えないようにしていたことを、友人の手前で気が緩んでいたのか、思わず口にしていた。
「もしかして小泉さん、犯人に心当たりがあるんじゃないのかな」
「なんとも言えないね」
 更紗の答えは当然である。彼女は、一連の騒動に関わっていなければ、小泉由紀子との接点もない。更紗に言えることは何もないのは当然だった。
「こうなれば、勝手に犯人を探すしかない。協力してくれるよね!」
 更紗は、そうなるのだろうなと思っていたため、突然話を振られても驚かなかった。ただ淡々と、『私は知らないからね』と忠告にもならないことを彼女に伝えるのみ。
「小泉さんに話すかどうかは、相手を見てから考えればいいし。いざとなれば、闇討ちして黙らせるべし。うん、最高の名案だね、これは」
 嬉々として危険なことを言っている、若干一名のお調子者。彼女が暴走し始めたら、とにかく放っておくのが無難である。見ている分には、彼女の暴走も楽しいからだ。しかし、更紗も色々と弁えている。行き過ぎそうになったら、手綱を操(く)る。それが出来るのは、唯一更紗だけであるが――それをよく見誤る更紗でもあった。
 翌朝、七時を少し回った頃。そんな朝早い時間に藍と更紗は、由紀子のクラスにいた。
「これでよし・・・と」
 更紗から借りたデジタルビデオカメラを教壇の反対側にある棚に設置する。ここに置いていれば、誰が黒板に落書きをしているのかが分かる――そういう案だった。隠す事もなくポンと無造作に置いてあるが、黒板に落書きをする人間が気付くのは難しいと判断しての事。ビデオカメラに気付いた別の学生が、高価な代物なので持ち去ってしまう可能性もあるため、藍と更紗は別のクラスで待機する事に。生徒達が登校する時間になって回収すれば、盗難のリスクは限りなく少なくなるだろう。
「こんなんで大丈夫かね」
 どう贔屓目に見ても、立派な策とは言いがたい。心配する更紗をよそに、藍は余裕綽々であった。
 しかし――。
 一日目何もなし。
 二日目何もなし。
 三日目、やっぱり何もなし。
 四日目何もなし。
 休みを挟んで、一週間。張り続けても、結局犯人と思われる人物は姿を現さなかった。当然、黒板の落書きも最初の一回だけである。由紀子は、こうなる事が分かっていて犯人は探さなくてもいいと言ったのか。それは何かが違う――藍は、釈然としない気持ちを抱えつつ、もう一週間更紗に頼んで張り込みを続けた。
 そして――。
 再び土曜と日曜を挟んで、月曜日の朝。
 いつものようにビデオカメラを設置して、藍と更紗は隣のクラスへ。椅子に座ると同時に、藍は溜息をついていた。
「ったく、なんで現れないのよ」
 一回落書きしただけで気が済んだとでもいうのだろうか。だが、それでは藍も困るのだ。せっかく準備していたシナリオが不意になってしまう。なんとしてもきっかけを得なければならなかった。
 不自然な焦りを見せる藍。更紗も様子が変だということは気づいていた。これほど彼女が熱心なのは珍しいからだ。いつもは淡白な性格で、更紗という例外はいるが、基本は他人にもそっけない。しかし、それが分かっていても、かける言葉は見つからなかった。
 更紗は感じていた。藍は、いつも何かと戦っていて、それはきっと、更紗には想像もつかないものなのだということに。ただ、見守る事しかできない。それでいいと、更紗も思っている。きっと、藍は望んでいない。藍の事情、それを更紗が知るということを。
「意外に気付かれていたり」
「まさか。それは・・・」
 藍が言葉を途中で切って、静かに立ち上がった。更紗には何も聞こえなかったが、藍には聞こえたのだろう。空気を読んで、更紗も静かにする。すると、更紗にも聞こえた。廊下を上履きで歩く音が。
 音は、反対側から聞こえてきている。すなわち、この教室の前は通らない。藍はじっと立ったまま、音に耳を傾けている。いつになく真剣な面持ち。
 教室の戸を開ける音が聞こえた。
 重苦しい空気が漂う。
 十分ほど経過。廊下を再び歩き出した。やはり、藍たちがいる教室とは反対側へと歩いていく。
「・・・一旦学校を出て、登校しなおす腹だね、こりゃ」
 反対側は、階段だ。昇るのか降りるのかはここからでは分からないが、わざわざ昇るメリットはない。下に降りて一旦学校を出ると考えた方が無難である。
「さて、確認しなきゃね」
 廊下に誰もいないことを確認して、教室に入りカメラを回収する。液晶画面を展開して、再生を押そうとした時、藍は背後に気配を感じて慌てて振り向いた。
 背後には、確かに誰かがいた。だが、その顔を判別する間もなく、藍の視界は真紅に染め上がった。

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